漢 方
書 籍

傷寒・金匱薬物事典 購入

伊田喜光総監修/根本幸夫・鳥居塚和生監修
/B5版/336頁/4200円/万来社刊

書評:小根山隆祥

今般、伊田喜光総監修、根本幸夫、鳥居塚和生の三先生を中心に著作された『傷寒・金匱薬物事典』は、傷寒論の91種、金匱要略の154種と、加味方中にのみ記載されている薬物を含め、傷寒論・金匱要略収載の全生薬169種(76種が両書に重複収載)について解説されている。

本書では、これらの生薬を「発汗発表薬」「清熱薬」のように主要な薬効群に分類して収載している。分類には「基原未詳」や「用法未詳」などの項目ももうけ、無理な分類をしないところがよい。

巻末の付録として、度量衡や修治についての解説や漢方用語解説などもあり、これから傷寒論や金匱要略を勉強するものにとっては非常に便利だと思う。

生薬解説の各論を見ると、「基原」には日局15方収載の含量規格が付記され、「異名・別名」には古典に現れる主な生薬名のほか、中国で流通している名称なども掲載している。

「成分」の項では、アルカロイド・フラボノイド・タンニンなど大きく成分群を記載し、そこにカッコ書きで主な固有の成分や薬効に関係ある成分を付記してある。情報が整理され、不要な細かさがないのが良い。

「引用文献」の項には、古典の文献とそこに収載されている薬能を平易に記載、専門用語を減らし、どうしても必要な用語のみに限って使用している。「性味」すなわち薬性・薬味を基にしてそのほかの書物を参考に検討記載してある。

「現代における効能主治」の項でなされる作用の説明も、四字熟語の羅列ではなく、わかりやすい日本語で解説されている。また「付記」においては、例えば近年における麻黄のサプリメントでの使用や、細辛の項ではウマノスズクサ科の植物のアリストロキア酸による腎臓障害の記事ものせていて、至れり尽くせりの感が存る。

そして「傷寒論・金匱要略における運用法」こそ、この本の特長となる記事である。

作用を述べ、配合・処方例をあげて他の生薬との組み合わせと結び付けていることは、これからの漢方説明。運用の実際に大いに役立つものと思われる。配合応用についてもユニークな考えでまとめている。

処方を構成している薬物の基原や生薬の効能・薬性がわからなければ、薬方の真の性格・使い方・運用が理解されないのではないか。新しい薬方を見せられたとき、それをどう理解するかは生薬の知識がなければならない。

薬方を理解するうえで、初学者、漢方医学を専門とする人、医師、患者に漢方の説明をする立場にある薬剤師に必読の書であると推薦する。






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